死刑制度が廃止された近未来の日本を舞台に、冤罪を訴える青年が殺し合いの無法地帯へと放り込まれる異能サバイバル漫画「黄昏町プリズナーズ」が、マガジンポケットで連載中だ。藤モロホシ・ショーキ名古屋による本作は、極限状態の中で主人公が秘めた才能を開花させていく姿を描く。
物語の核心にあるのは、死刑制度廃止後の日本に誕生した治外法権特区「黄昏町」という設定だ。高さ50メートルの壁に囲まれたこの町では、殺人も強盗も罪に問われない。重犯罪者たちが送り込まれ、死刑囚同士が殺し合いを強いられるという、文字通り地獄のような場所である。
その黄昏町に収監されたのが主人公・千頭悠真(せんどうゆうま)だ。放火殺人の罪を着せられたとはいえ、本人は冤罪を訴える至って平凡な青年。真面目に勉強し、就職し、普通の人生を歩んできた悠真にとって、到着早々に人の転落死を目撃し、金属バットで殴られ、斧を持った巨漢に追い回されるという現実は、あまりにも過酷すぎる洗礼だった。
「殺す……? できる気がしないんだけど……」という悠真の言葉は、読者の多くが共感できるリアルな恐怖感を体現している。しかしそんな彼を突き動かすのが、自分を助けて火事に遭った婚約者・楓の存在だ。愛する人の思いを無駄にしないため、「絶対に生き延びる」と決意した悠真は、戦闘力ではなく策略の才能を武器に、過酷な現実へと立ち向かっていく。
本作の魅力は、主人公が最初から強者として描かれていない点にある。肉体的に優れているわけでも、最初から特殊能力を持っているわけでもない悠真が、黄昏町という極限環境の中で徐々に頭角を現していく過程は、読者を自然と物語に引き込む力を持っている。戦闘よりも知略を前面に押し出したサバイバルの描き方は、同ジャンルの作品の中でも独自の色合いを放っている。
また、黄昏町に収監された個性豊かなキャラクターたちの存在も読みどころのひとつだ。それぞれが異なる事情を抱えてこの地獄に送り込まれており、悠真との関係が物語に複雑な奥行きを与えている。敵なのか味方なのか、一筋縄ではいかない人間関係の駆け引きは、サバイバルものとしての緊張感をさらに高めている。
社会的な問いかけという意味でも、本作は読み応えがある。死刑制度の廃止という現実的な議論を下敷きにしながら、その代替として生まれた制度が生み出す残酷さを描くことで、単なるバトル漫画にとどまらない問題提起が随所に感じられる。エンタメとしての面白さと、社会的なテーマの両立を試みている点が、作品としての深みにつながっている。
「黄昏町プリズナーズ」はマガジンポケットにて連載中。第1巻はすでに発売されており、今後の展開と悠真の覚醒がどこまで描かれていくのか、続刊から目が離せない。