「釣りキチ三平」をはじめとする矢口高雄の作品世界を凝縮したムック「矢口高雄の世界 ART WORKS 1969-2020」が、3月31日に発売された。カラーイラストを中心に構成された一冊で、単行本未収録のエピソードも収められているという。
本書は、矢口高雄が1969年のデビューから2020年に至るまでの約半世紀にわたる創作活動を、イラストという切り口でまとめたアートワーク集だ。長年にわたって描き続けられてきたカラー原画や扉絵など、普段は単行本では味わいにくい素材が一堂に会している点が大きな特徴となっている。さらに単行本未収録エピソードの収録は、コアなファンにとってはたまらない内容と言えるだろう。
矢口高雄といえば、やはり「釣りキチ三平」の作者として広く知られている。1973年から「週刊少年マガジン」で連載がスタートし、秋田県出身の少年・三平三平(みひら さんぺい)が各地を旅しながら様々な釣りに挑んでいく物語は、子どもから大人まで熱狂的なファンを獲得した。釣りという題材を通じて自然の豊かさや人間の機微を描いた作風は、今なお色褪せない魅力を持っている。アニメ化もされており、昭和を代表する国民的マンガのひとつとして語り継がれている作品だ。
矢口高雄は2020年に逝去しており、本書はその意味でも、作家の軌跡を振り返る集大成的な一冊となっている。デビューから晩年まで一貫して自然と人間の関わりを描き続けた姿勢は、イラストという形で改めて眺めると、その一貫したこだわりと画力の変遷を同時に感じ取ることができるはずだ。
単行本未収録エピソードの存在は、「釣りキチ三平」をリアルタイムで読んでいた世代にとっても、近年原作に触れた若い世代にとっても、新鮮な発見になるに違いない。雑誌掲載時にしか読めなかった内容がこうして一冊にまとまることは、作品のアーカイブとしても非常に意義深い。
矢口高雄の画業を改めて俯瞰できる本書は、ファンにとっての永久保存版であると同時に、これから作品を知りたいという人への入門書としても機能しそうだ。今後も関連する復刻や資料公開の動きがあれば、ぜひ注目していきたい。